プレッシャーをかけても思考は速くならない。
一時的なプレッシャーや残業は、人びとの焦点を定め、その仕事が重要であるという認識を高めるには有効かもしれないが、プレッシャーをかけすぎると、かならず失敗する。
(デッドライン―ソフト開発を成功に導く101の法則/トム・デマルコ)

工場ラインなどの単純作業であれば別ですが、少なくとも知的生産活動において、大抵の場合、残業は期待する効果を発揮しません。
なぜなら、プレッシャーをかけても思考は速くならないからです。
むしろ効率を悪化させ、無駄なコストを発生させることになります。生産効率の面からも、体力的な面からも、残業代などの経費(経営)的にもです。

これはソフトウェア開発だけでなく、企画書の作成やレポートの作成などでも同じです。
工場のライン作業などであっても、残業が慢性的であるならば、残業代や疲労による作業効率の低下(やそれに伴う事故発生率)を考えたら、人員を増やしてシフトを効率化したほうが効果的かもしれません。
したがって、トラブル対応などのイレギュラーは別として、残業ほど無駄なコストはないと言うことになります。

納期などのプレッシャーがないとやる気が起きないという場合もありますが、これはモチベーションの問題であって思考能力の問題ではありません。
また、重すぎるプレッシャーは逆にモチベーションを消失させてしまいます。
もし貴方の職場で残業が慢性化しているなら、仕事のやり方か職場環境のどちらか、あるいはその両方に問題があると言うことです。

また、本書では『おそるべき推測』として、「プレッシャーや残業を使う本当の理由は、プロジェクトが失敗したときに誤魔化すためかもしれない」とさえ述べています。
もし残業が慢性化しているなら、すぐにでも改善に着手した方が良いでしょう。

デッドライン―ソフト開発を成功に導く101の法則デッドライン―ソフト開発を成功に導く101の法則
(1999/03)
トム デマルコ

商品詳細を見る